「崩れる脳を抱きしめて」 広島本紹介第1弾!

どうも、よっさんです。
早くも年末の足音がひたひた……秋も深まり寒さを感じるようにもなりましたね。皆さんいかがお過ごしでしょうか。

安芸ん堂の一大イベント(?)でもあるビジネスフェア出展が終わり、年末&年度末にかけて本業である印刷部門が繁忙期になるため安芸ん堂はそろそろ冬眠に入ります。。。の前に、ブログまで冬眠してしまうのは寂しい限りですので、安芸ん堂スタッフのイチオシ広島本を不定期リレーでご紹介しま~す。

“広島本”とは、広島が舞台になっている、広島出身の作者、タイトルに「ひ」「ろ」「し」「ま」が入っている…等々“ひろしま”つながりなら何でもOK!(←そんなルールだったっけ?!とスタッフから突っ込まれそう…)さぁ、どんな本が飛び出してくるでしょうか?

トップバッターの私がご紹介するのはこちら。

「崩れる脳を抱きしめて」表紙

知念実希人さんの「崩れる脳を抱きしめて」です。
…タイトルを見ても、作者名を見ても、どこにも広島らしさがありません(ちなみに名前からわかるように、作者は沖縄出身)。では、なぜこの本をご紹介するのか?それは、この本が第8回広島本大賞において「小説部門」を受賞した本だからです。

広島本大賞とは、広島の書店員が会社の枠を超え、タウン誌出版4社とともに広島の魅力溢れる本を選定するものです。よっさんかめブログで取り上げたこともあります(←この本も激しくオススメです!!!)

受賞講評に「広島色がより出ている作品」とあるほか、知念さんは第4回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の受賞をきっかけに作家デビューされており、実は広島に縁のある作家です。ちなみに本作品は、第15回本屋大賞ノミネート、そして広島本大賞と同時期に発表された第4回沖縄書店大賞の小説部門も受賞されています。

ということで読み進めていきますが、なかなか広島にたどり着きません。本の帯に書かれている「舞台は広島!!」に騙されたかと一瞬疑いましたが、主人公の研修医・碓氷蒼馬(うすいそうま)の出身地が広島県の東部・福山市鞆の浦、勤務先が広島市の平和記念公園にほど近い「広島中央総合病院」という設定でした。碓氷が地域医療の研修として過ごした神奈川県葉山町のホスピス病院「葉山の岬病院」から、ストーリーは展開していきます。

碓氷が研修先で受け持つことになった、グリオブラストーマ(脳腫瘍の一種である膠芽腫)を抱える弓狩環(ゆがりたまき、だが本人は“ユカリ”と呼ぶように言う…これが物語の鍵)との間に、医師と患者を超える感情が芽生えて…という淡い恋物語の展開に、恋だの愛だのを超越したよっさんは少々鼻白んでしまいます。しかし、15年前に起こった碓氷の父親の失踪と離婚、そしてその死の真相が解き明かされるあたりから、ただの恋愛小説から一気にミステリーの色を帯びはじめます。

研修が終わり広島に戻った碓氷、そして碓氷の見立て通り最期を迎えたユカリ。失意を抱きつつも違和感を感じた碓氷は、真相を確かめるために葉山を再び訪れますが、病院関係者に「あなたは弓狩さんを診察していない、妄想だ」と言われ愕然とします。自分が愛した女性に何が起こったのか。本の後半1/3は、それまでのゆったりと流れる恋愛ムードとは打って変わって急展開。ユカリとは一体何者だったのか、そして碓氷は…奇想あふれる展開、そしてクライマックスのどんでん返し。まさに、本の帯にある「感動の恋愛ミステリー」そのままの本でした。

ここで紹介する機会がなければ、絶対に自分から買って読んでみようとは思わなかったでしょう。そもそも、新刊本を買うのも久しぶりで。。。そんな私ですが、興味がないと思い込んでいたジャンルの本に感銘を受けました。皆さんも、たまには自分が好きだと思い込んでいるジャンルから飛び出して冒険してみてはいかがですか?「崩れる脳を抱きしめて」は、そんな読書の冒険にぴったりですよ!

崩れる脳を抱きしめて
知念実希人 著 四六判292ページ
2017年9月15日発売
※出版社サイトの画像と私が広島で購入した本では、帯(カバーの下部に重ねるように巻いてある細い紙)が異なります。さすが“広島本”!